セカンドパートナー

 今は、大丈夫。

《おはよう。詩織。朝焼けが綺麗だな。詩織と見たい。》

 並河君と、毎日メールで朝の挨拶ができる。明るい気分で1日のスタートを切ることができる。

《おやすみ。今夜は冷えるからあったかくして寝てな。夢の中で、詩織に会えますように。》

 前までのように友達的な近況報告ではなく、恋人として私を気にかけ愛してくれる。

 優人とは現実的な夫婦生活を。並河君とは将来を見据えた深い恋愛を、これからしていきたい。私の人生にはどっちも必要なものだ。


 鍋の日以来、優人は少し変わった。

 「詩織」と、下の名前で呼んでくるようになった。

 そして、私が疲れているのを察すると、家事を手伝ってくれるようになった。前までは頼まないとやってくれなかったのに、今では自ら食器を洗ったり洗濯物を干してくれる。たまにのことでも嬉しかった。

 念のため、優人には、鍋の日のことをこう話しておいた。

『並河君に励ましてもらって、元気出たよ。私も結婚してるし並河君も忙しい人だからもう会うことはないけど、同級生としてメル友になってもらうことにした。会うとしても、羽留と三人で友達として会う。いいかな?』
『もちろん! 詩織、いい友達ができて本当によかったね。並河さんなら信用できるし、俺からもよろしく伝えておいて』

 こういう人でよかった。……内心笑った。

 裏切っているという罪悪感は全くなかった。こうなることは必然だったような気がする。

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