セカンドパートナー
仕事のためにしていた習慣的スキンケアやオシャレを、最近では心から楽しめるようになった。
並河君はいつも褒めてくれるけど、着飾らない私のことも好きだと言ってくれた。それでも、綺麗になりたいと向上心が湧いた。
料理屋の嫁になったのだから好き嫌いはなくさなきゃいけない。義親の店でご飯を食べると毎回のようにそう言われムカッとしていたけど、『この人達はそういう考え方なんだな。考え方を押し付けるクセがあるんだな』と、冷静に受け流せるようになった。
全て、並河君のおかげだ。
並河君は、私の心にたまった毒を吐き出させてくれる。どんなグチも真剣に聞き、励ましてくれる。
「俺も好き嫌いあるよ。性格や好みが人によって違うように、味覚だって人それぞれ違って当たり前。優人さんのご両親にだって苦手なものがあるように、詩織にだってある。何を言われたって詩織は悪くない。好きも苦手もあって当たり前。そのままでいいんだよ」
そのままでいい。その言葉を、結婚生活の中で何度も求めた。
本当は、義親に『そういうあなたでもいいんだよ』と優しく受け入れられたかった。それだけだったんだ。それが叶わなかったから傷つき、相手を嫌いになった。そんな自分のことも嫌になった。
素直な自分に気付かせてくれる。弱さを受け入れるための勇気をくれる。並河君の言葉は私をプラスの方向に導いてくれる魔法そのものだった。