セカンドパートナー

 美季は探るような目をし、自分の子供をたしなめる時のように穏やかな口調で言った。

「そういうところ気に入らない。昔から何度も言ってるけど。何か悩んでるなら話してよ。解決はできないかもしれないけどさ」
「ごめん……。悩んでたのはたしかだけど、美季に嫌われたくないから言えない」
「そこまで深刻なの? 何? 並河奏詩と、人に言えないような関係にでもなったわけ?」

 その通りだ。何も言えず、私は黙り込んだ。

 サバサバして話し好きな一方、美季はとても口が堅い。だから、並河君との関係を知ったら秘密にしてくれるだろう。そういう意味でも信用はしている。だけど……。


 私が並河君と不倫していると決めつけ、美季は言った。冷静だけど厳しい、そんな口調で。

「今でもマンガやドラマのイケメン好きになるとか、私も無責任なこと言っちゃったね。でも、それは詩織を煽(あお)るつもりで言ったんじゃないよ。マンガと現実は違う」
「分かってるよ。それに、美季に煽られたなんて思ってない」
「だったら何でそんなことしてんの?」
「並河君のことが好きだから。自分の気持ちにウソつきたくない」

 腹をくくって、本当のことを話すことにした。ここまできたら、もう隠せない。

「高校の時から並河君のことが好きだった。結婚した後も、心の中には並河君がいた」

 色々すれ違いがあって付き合うことはできなかったけど、結婚後も連絡をくれる男友達は並河君だけだった。書道教室でたまたま再会して、やっぱり好きだと思った。

 そういうことを、ざっと美季に話した。

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