セカンドパートナー
「一時の関係だからだよ。目を覚まして? 詩織……」
美季は言い切った。
「私も恋愛ドラマとかにドキドキして楽しんでるけど、それと現実は違う。旦那がいて、子供二人も元気で、家族4人、いつまでも楽しく幸せに暮らしたいと思ってる。もちろん、いいことばっかじゃないよ。嫌なこともたくさんあるけどさ……。家族がいるからつらいことも乗り越えられる。子供のためなら疲れてても仕事がんばれる。そういう生活に他の男なんて必要ない」
そうだよね。美季はそうだ。不満と同じくらい幸せも感じていて、今ある家族の形を守ろうとしている。それはとても素晴らしいことだ。いつまでも美季の幸せが続くことを祈っている。
美季は、羽留とは違う種類の優しさや強さを持っていた。昔からずっと。
並河君との関係に反対するのも、美季なりに私の幸せを真剣に考え願ってのこと。その意見に耳を傾けはする。でも、従うことはできない。
冷静に、私も主張した。
「家族の在り方は人それぞれだと思うよ。少なくとも私は悪いことをしてるなんて思わない。並河君が強引に再婚を迫ってこないのも、私が優人に感じる責任を尊重してくれてるから。決していい加減な気持ちじゃない。信じてる」
「並河奏詩を好きなのは充分分かったよ。そんな気持ちで優人君とやっていけるの?」
私はうなずいた。
「10年間優人と居て、並河君と恋人になれて、分かったことがあるんだよ。私は今まで、優人に求めすぎだったんじゃないかって」
「……」
「一人の人が受け止められる物事の容量には限度がある。私は優人の限度を知らずに不満ばかり感じてた。それで優人を責めた。そういう意味で、私は義親と同じだったんだよ。勝手に期待して傷ついて怒って……。並河君と話して、初めてそういうことに気が付いた」
「……」