セカンドパートナー
ーーーーそれから、何十年もの時が流れた。
当然のように私は歳を取り、日々、時の流れが早いのを感じている。
つい最近、美季の第二子だったレン君から電話が来た。美季の手帳に書いてある私の電話番号を見てかけてきたらしい。
あんなに小さかったのに、立派な大人になっていた。声だけで充分分かる。
『突然の電話、申し訳ありません。昔は大変お世話になりました。いきなりなんですが、母に会ってあげてくれませんか?』
レン君は、かつての美季の状態を説明してくれた。
私に絶交を告げた頃、美季は旦那さんとの仲があまりうまくいってなかったそうだ。旦那さんは家庭から逃げるみたいにキャバクラ通いに夢中になり、家に帰らない日もあったという。
レン君達も、幼いながら両親が放つ不穏な空気を敏感に察していたようだ。
『今はもう落ち着いて父と母は仲良くやってますけど、詩織さんに会えなくなってからの母は毎日寂しそうでした。何があったのかは分かりませんが、また昔のように話相手になってやってもらえませんか? 俺もなるべく様子を見に行ってるんですが、奥さんと子供もいるのでそうしょっちゅう実家に帰るわけにはいかなくて……』
6歳だったレン君もすでに家庭を持ち子供がいる。もう、そんなに経ったんだな……。
いまさら美季とどう話せばいいのか分からないけど、可能ならまた、昔のように仲良くしたい。
成長した自分の子供にすら、私にセカンドパートナーがいることを言わなかった。縁を切った後も秘密を守ってくれた美季の気持ちに、深く感謝した。
そして、こうしてレン君が電話をくれたことを、とても嬉しく思った。
羽留とは今でも、何でも話せる親友同士。時々会ってはお互いの話をし、一緒に買い物や旅行にも行く。
彼女も最終的に子供を産まない選択をした。仕事は大変そうだけど、旦那さんと二人、穏やかに暮らしている。
それからしばらくし、優人は先に寿命を終えた。中年期から血圧の高かった優人は定年退職後すぐに体を壊し、あっけなく亡くなった。