セカンドパートナー
夫婦二人の暮らしも、義親が亡くなってからはそれまでのストレスがウソのように気楽なものだった。
法事に行っても私達夫婦が最年長なので、子供がいないことで文句を言う人は一人もいない。年上の人間から干渉されたり嫌味を言われない日々はとても心穏やかで、年下の親戚にも優しく振る舞うことができた。
優人への気持ちが愛なのか情なのか、結局最後まで判断できなかったけど、秋月さんとの鍋以来大きなトラブルもなく、いつしか彼への感情は家族愛のように丸いものへと変化していった。
義弟夫婦は何かあると全て長男の優人を頼っていた。チハルちゃんはいくつになっても若い子扱いをされ私は損な役回りだった。彼らには頼りたくなかったので、優人の葬儀に関する準備や後片付けは専門の葬儀屋に任せ、淡々と行った。
優人の火葬。その瞬間はやはり涙が出たけど、それを超える幸せを前に、心の中には光が射した。
優人の一周忌を終えてすぐ奏詩と入籍し、あのマンションで共に暮らすことにした。柔らかい日差しが心地いい春の日だった。
奏詩は変わらず芸術家として忙しい日々を送っていたけど、入籍後は仕事をセーブし日本にいてくれることが増えた。
《並河奏詩・詩織》
玄関の表札には、夫婦として生きていく私達の名前が刻まれている。