セカンドパートナー

 ようやく落ち着いた美季との友情を、私の悩みでひっかき回したくない。

《再会はしてないけど、何となくそう思って》

 私はウソをついた。

 でも、美季には通じなかった。私の本音を暴かせるべく、彼女はすぐに電話をかけてきた。

 今までLINEしてたクセに出なかったら絶対怪しまれる。そう思い、こわごわと電話に出た。

『ウソってすぐ分かるー。誰と再会したの? 言ってみー?』
「美季はあんまり知らない人だよ」
『そうなのー? 高校の人?』

 美季がそう言うのは当然だった。それでも、そう訊かれたら緊張してしまう。

 美季とは小中と同じ学校で、大学も同じところへ通ったけど、高校だけは離れた。それでもしょっちゅう会っていたけど、違う高校に通う美季に、同じ学校の並河君のことは当時あまり話さなかった。

 並河君について美季に話したことと言えば、美術科の生徒で絵が上手いということや、地味でも派手でもない不思議な空気の持ち主だという、あの高校にいた人なら誰でも知っているような情報だけで、私が彼にどんな感情を抱いていたか、細かには説明していない。

 だから、当時私が個人的に彼を深く気にしていたことを、美季は知らない。

 なので、

『もしかして、美術科の人?』

 こう訊かれた時、美季をエスパーか何かだと思い、ひどく驚いた。

 心臓がドキドキする。美季の口から並河君に関するワードがちょこっと出ただけでこれじゃあ、否定なんてできない。してもすぐ見抜かれるだろう。

< 33 / 305 >

この作品をシェア

pagetop