セカンドパートナー
「どうして分かったの!?」
『だって、高校の頃の詩織って、その人のこと話す時が一番楽しそうに見えたから』
「そう見えてた?」
美季の観察眼には脱帽だ。
私は、昔から感情の起伏の表現力が乏しいと言われていた。笑ったり怒ったりしているつもりでも、人から見ると無表情。声にも抑揚がない、いわゆる脱力系の印象を周囲に与えていた。
それは高校生になっても変わらなかったし、大人になった今でもたまに人から言われる。ひそかなコンプレックスでもあった。
だからこそ、本音に気付いて悩みを吐き出させてくれる並河君や羽留(はる)の存在は貴重だったし、美季にも言葉足らずだと怒られた。
それなのに、高校の頃からすでに美季は私の本音を察していたというのか……。
『詩織のことならたいていのことは分かるよ』
「……そっか。そうだったんだね」
それだけ、私を見ていてくれたということなんだろうか。じんわりと美季の言葉に感動するのも束の間、彼女はズバッと本題に切り込んだ。
『並河奏詩(なみかわ・そうし)だっけ。今パソコンで検索したら出てきた』
「よく名前分かったね!」
『詩織の高校出身で世界的な有名人になったの、その人だけだし。レンもその人の絵が載った本持ってるよ〜』
「もう6歳になるんだっけ。レン君、小さい時から本好きだったよね」
『そうなの。本屋行くたびおねだりされるよ〜。金ない時はホント困る!』
そう言いつつ美季の声は明るくて、母親の慈愛に満ちていた。レン君は美季の下の子だ。