セカンドパートナー

 美季と会うと、たいてい彼女の家でお菓子を食べながら色々話したり、彼女に付き合って食材の買い出しに行くのが主なので、自然と美季の子供とは接する機会が多くなり仲良くなった。

 美季んちに行くたび、詩織ちゃん、詩織ちゃん、と、純粋な瞳で甘えてくるレン君はとっても可愛いなと思う。今も子供はあまり好きじゃないけど、友達の子は別だと実感した。

 産まれた頃から会っているレン君が並河君の描いた絵を見て育っているなんて、不思議な感覚だった。

 並河君は、個展の合間に絵本の作画の仕事もしていると言っていた。言っていたというより、メールでそう報告されていたという方が正しいのだけど。

『並河奏詩と会ったの?』

 芸能人の話をするノリで、美季は尋ねてくる。

「うん。実は書道教室に通うことになって、その先でたまたま会って」
『書道教室!? 自由な時間あっていいなぁ……。私は子供の習い事行かせるのでいっぱいいっぱいだよ』
「そうだよね。でも、私もそんな気楽なもんじゃなくてさ。気分転換も兼ねてだよ」
『相変わらず、姑うるさい?』
「会うたびに子供まだかー言われる」
『ウチも。子供が人見知りなの私の子育てのせいって言われて、マジうざかったー』

 暗くなり過ぎないよう笑いを交えて、互いのグチを吐き出した後、

『話戻るけど、並河奏詩に告られた?』
「ううん、それはないけど……」

 思い切って、今日のことを軽く美季に話してみることにした。

「書道教室の先生が秋月香織さんっていう女の人で私達と同い年なんだけど、その人と並河君が付き合ってるらしくて……。並河君はすぐに帰ったけど、その後もちょっと複雑な気分で……。並河君とは親友としてずっとメールやり取りしてた仲なのに……」
『香織にヤキモチ妬いたってこと?』
「そうなのかなぁ? 分からない……」

 美季は、そうやって自分の知らない人の名を呼び捨てするクセがある。悪意はない。
< 35 / 305 >

この作品をシェア

pagetop