セカンドパートナー
幸せな家庭であたたかい愛情を受けて育った優人と、子供のことに無関心で感情的に八つ当たりをする親に育てられた私では、天と地ほどの違いがある。
優人は友達が多くて明るい。私は真逆で、人付き合いが苦手で友達も片手で数えられるほどしかいない。
子供の親になるには未熟すぎる、そんな両親を見て育ったせいか、私は年頃になっても結婚願望を抱くことはなかった。だけど、それを承知で優人はプロポーズしてきた。
最初は断るつもりだった。結婚しても理想の奥さんになんてなる気はなかったし、子供もそんなに好きじゃないのでできたところで可愛がれる気がしなかったから。
だけど、プロポーズを断ろうと口を開こうとしたその時、優人を手放したくないという強い想いが湧いて止まらなかった。
優人とは大学3年の頃から付き合い、プロポーズを受けたのは卒業後すぐだった。
恋人としての交際期間はたった数年だったけど、優人は父とは違う。それは分かっていた。
父のように、ストレスをため怒り任せに怒鳴る男性でなければ……。優人みたいな人こそ、結婚するにふさわしい男性だと思った。
経験則か、直感か。私の読みは当たったらしく、優人とは平穏な結婚生活を送れている。
頼めば家事を手伝ってくれるし、私が病気の時は手料理を作り熱心に看病してくれる。仕事帰りにしょっちゅう私の好物を買ってきてくれる。
生活に困ることもなく、大きな障害もなく、深い傷を負うこともなく、なにげないやり取りにたわいない愛を感じて……。
私は一生、こうやって生きていく。これまでの10年間もそうしてきたのだから。