セカンドパートナー
「そんなにいいんだ。じゃあ今度聴いてみるね」
答えたその時、強い風が吹き、たくさんの枯れ葉が勢いよく舞い上がった。何かを考えている並河君の髪がなびき、物憂げなその横顔がとても綺麗に見えた。
秋の風に、冬の匂いが混じっているように感じた。
「微かに冬の匂いがするな」
「私も今同じこと思った!」
目を見合わせると、お互いにビックリした顔をしていた。
「同じ感覚共有するの、天使さんが初めて」
「私も…!」
「風の匂いの変化とか、周りに言っても『わけわからん』って返されて終わる」
「そうだよね〜、私もそう」
初めての感覚だった。胸の奥からあたたかい何かが込み上げてくる。
小学生の頃、感受性が豊かだと通信簿に書かれたことがある。他に褒めるところがないからそうやって適当なことを書いたのだろうなと教師の見方を疑っていたけど、今なら信じられると思った。
何の取り柄もない私だけど、並河君と同じ受け止め方を共有できるだけでこんなに気持ちが安らぐんだなと知れた。それだけで充分。
「詩織、お待たせー! ごめんね! 思ったより時間かかってさ!」
用事が終わったらしく、羽留が急ぎ足で戻ってきた。
「全然大丈夫。用事お疲れ」