セカンドパートナー

 私達の会話を聞いていた並河君が、ポツリと言った。

「名前、綺麗だな」
「え!?」

 羽留と私の驚く声が重なった。

 名前が綺麗って、どっちのことだろう? 羽留? 私?

 羽留と知り合った時、彼女の名前を可愛いと思ったので、並河君も同じ感想を抱いたのかなと思った。

 彼が言ったのは羽留のことではなく私のことだった。

「詩織って名前、いいよな。俺もこれからそう呼んでいい?」
「う、うんっ、別にいいけど……」
「やった!」

 戸惑う私とは逆に、並河君は晴れ晴れした表情を見せた。

「じゃあさっそく。詩織」
「うん…?」
「詩織」
「連呼やめて! なんか恥ずかしいっ」

 照れくさくて、抵抗した。

「いい名前じゃん、『詩織』」
「初めて言われたよ」

 男子に下の名前を呼び捨てにされたのは初めてだった。とても特別な意味に感じてしまう。並河君の声は今まで聞いたどの男子の声より優しい感じがしたから、よけいに……。


「じゃあね、詩織。友達との時間邪魔してごめんな。友達もバイバイ!」

 並河君は手を振り、羽留にもフレンドリーな挨拶をして美術科の校舎がある方へ戻っていった。放課後なのに、まだ学校に残るのかな?

 並河君の後ろ姿を見て、彼がどれだけ絵を好きなのかを知った気がした。

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