セカンドパートナー
並河君の姿が見えなくなっても、胸がそわそわしていた。変な感じだ。
『詩織』
彼の声が、まだそこで響き続けているような気がする。胸があたたかい。
「今の、美術科の並河君だよね!? いつの間に友達になったの?」
「まだ友達じゃないよ。この前ウワサのこと謝りに来てくれた時に初めてしゃべって、それだけだし。会うの今日で2回目」
「そうなの!? でもでも、すごいよ! 並河君って、全国の絵画コンクールで小学生の頃に最年少優勝したっていうし!」
「コンクールのことそんなに分からないけど、それってそんなにすごいの?」
「すごいなんてもんじゃないよ! ピアノやってなかったらイラスト関係の習い事したかったもん、あたし。だから、前々から並河君の活躍には興味があってさ! 同じ高校って知った時はテンション上がった、ホントに」
ここまで誰かのことを生き生き語る羽留を、初めて見た。言われてみれば、たしかに羽留は絵も上手い。
時々、音楽科の校舎に遊びに行くと、羽留が気まぐれに黒板に絵を描いて見せてくれる。絵本にしたら大人気になりそうなくらい、コミカルで可愛いイラストだった。
「羽留も絵上手だもんね」
「並河君には敵わないけどね。でも、思ったより気さくな人だったよね」
「うん、そうだね」
「先生からも特別扱いされてるし、雲の上の人っていうか、もっととっつきにくい人かと思ってたよ」
「全然そんなことなかったね」
羽留も、並河君に好感を持ったらしい。
元から似た所のある私達。同じ男子に惹かれるのは当然なのかもしれないけど、羽留が並河君と特別親しくなることを想像するとモヤモヤしてしまう。
羽留のことが大好きなのに、こんな気持ちになってしまう自分が嫌だ……。
「そんな不安にならなくても、大丈夫! あくまであたしの気持ちは尊敬に近い憧れのような感じだし、並河君のことそういう意味で好きになったりしないから!」
「ち、違うよ羽留! そんなつもりは……。それに、並河君のことなんて別に何とも思わないからっ」
「詩織はそうでも、あっちはどうか分からないよ〜?」