セカンドパートナー


「あ!」

 ふと、私は思い出した。

「羽留って、ショパン弾いたことある?」
「もちろん! 小学生の時、ピアノ教室の発表会でも何度か弾いたよ」
「『革命のエチュード』って、リクエストしたら弾けたりする?」
「あれかー! かっこいい曲だけど超絶難しいんだよ。指がもつれそうになるの。練習すれば弾けるようにはなるけど、出来は期待しないで……」

 羽留は4歳の頃からピアノを習ってると言っていた。それだけ長い経験があっても難しいなんて、どんな曲なのかますます気になる。

「そんなに大変な曲なんだね」
「今度弾こうか? リクエストなら喜んで練習するよ!」

 クラシックはもちろん、羽留はリクエストした流行りの曲を放課後の音楽室でよく弾いてくれる。今回もリクエストの一件だと思っているみたいだ。

「私も聴きたいんだけど、『革命のエチュード』は並河君のリクエストで。さっき話しかけられたのもそのことで。私のことピアノ弾ける人と思ったみたい」
「音楽校舎の前にいたからかな? なら、今度並河君も呼んでみる? あたしは全然かまわないよ」
「さすがに悪いよ。難しい曲なんだよね? 羽留の練習もあるだろうし……」
「気にしないで。いつもの練習には無理ない範囲でやるし、あたし自身のためにもなるから」

 そんな羽留がかっこいいと思った。好きなものを極めている人って素敵だ。

 さっき並河君のことが綺麗に見えたのも、彼が自分だけの絵の世界を持っているからかな?

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