セカンドパートナー

 家事をすませ、羽留との懐かしい思い出に和んでいると、メールが届いた。

《イタリアでの個展、大成功!来場者も多かった。詩織(しおり)にも見せたかったよ。》

 送り主は、並河奏詩(なみかわ・そうし)。羽留と同じく彼も高校で出会った同級生で、美術科出身の男性だ。

 私達の卒業した高校は、普通科、音楽科、美術科が併設された学校だった。


 高校時代、同じ普通科の子より、他学科の子と話している方が楽しかった。羽留も並河君も、私にはないものを持っていたからかな。

《私も見たかったよ、並河君の絵。》

 羽留同様、並河君との出会いもちょっと変わっていた。それは結果的に幸福なことだった。大人になった今でもこうして時々メールのやり取りを楽しんでいる。

 美術科の生徒だった並河君は美大に進み、大学卒業後はプロの芸術家として世界を転々としている。だけど、彼の自宅アパートは私の自宅と同じ市内にある。

 高校卒業後に実家を出て以来、一人暮らしをしているとは聞いたけど、彼の部屋に行ったことは今まで一度もない。そのことがとてつもなく不思議だった。

 並河君とは高校1年で出会った。知り合ってからしばらくは友人とも言えない浅い関係が続いたものの、ある日を境に距離が近付き、それからは学科の違いなど気にせず色んな話をした。

 高校を出て進路が分かれた後も、私が結婚した後も、途切れることなくこうして月に何度かメールをくれる。

 LINEやツイッター、インスタグラムやフェイスブックには興味がないらしく、並河君は昔からずっとメール一択。流行りに流されないところも彼らしくてかっこいいなと、密かに思う。

 男友達は大学時代にも何人かできたけど、結婚報告をすると同時にどの人とも疎遠になった。寂しいけど、そういうものだと思ってた。

 だけど、並河君だけは違った。
< 6 / 305 >

この作品をシェア

pagetop