セカンドパートナー
普通、好かれたらその相手を好きになる。それが人情。この前本屋で立ち読みした心理学の本にも書いてあった。
それに当てはまらないなんて、私は異質なのかもしれない。もはや人ですらないのかも。
思えば、恋という恋をしたことがない。
真実ではないとしても、恋愛がらみのウワサが流れる並河君はまともな『人』なんだなぁと思う。
並河君に話しかけられた時はそれなりに楽しくて、心も動かされたはずなのに、次に関わるまで間があると、それらの感情が幻だったような気がしてくる。
同学年の女子達のように、恋愛のことで胸をときめかせたり友達と華々しく語り合ったりしてみたい。そんな心持ちになれば、だけど。
そんな時だった。
「字にはその人の心が表れます。自分の内面と向き合って丁寧に書きましょう」
書道の授業で女教師が言った言葉に、心の中で苦笑した。
たかが書道。単位を取るための授業でどうして自分の心なんて見なきゃならないんだろう。それを表現し人にさらさなきゃならないんだろう。馬鹿げてると思った。
女教師は私の席に来ると、まだ墨の乾いていない字を見て厳しい目をした。