セカンドパートナー

「書き順が違いますよ。正しく書けるまで何度でもやり直しです! あなたいつもいい加減な気持ちで私の授業受けてるでしょう? 見てれば分かるんですよ」
「すみません」
「謝ればいいってものではないですよ」

 謝ったのに、まだ言うか。書き順くらいでそこまで目くじら立てる必要ある?

 女教師の言っていることが分からなかったし、しつこく注意してくることにもイライラした。

 その日は、放課後まで嫌な気持ちを引きずった。

 一緒にお昼を食べる同じクラスの友達すら気にとめなかったのに、並河君だけが私の気持ちに気付いた。

 放課後、校門の前で私を見つけた並河君は、確かめるように私の顔を覗き込み言った。

「足取りと目が、いつもと違う」

 作り笑いをすれば本音を隠せる。そう思っていたからこそその方法で今まで窮地を乗り切ってきたのに、並河君にはまるで通じなかった。まさか、足元や目を見られているなんて……。

「詩織の変化はすぐ分かる」

 まるでいつも私を見てるかのような言い方。普段なら『あれ?』と疑問に思うのに、本音を見抜かれた驚きで、この時はそこまで考えられなかった。

 駅まで、10分くらいの道のりをゆっくり歩く。

 並河君は遠すぎず近すぎない距離で私の隣を歩いた。その間、真面目な顔で話を聞いてくれた。

 この辺りは住宅もまばらで田んぼと畑が多い。冬は寒いので駅に向かう足は自然と早くなるのに、この時ばかりはもう少しこの通学路を歩いていたいと思った。

 白っぽい寒空が、綺麗。頬が妙にほてるから、冷たい風が心地いい。

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