セカンドパートナー

 正確に声を聞き取れなくてもいい。ホームにいる彼の姿を、もっと見ていたかった。

 それでもやっぱり電車はやってきて、私は並河君より先に電車に乗らなければならなかった。

 悲しいわけじゃないのに、涙が出そうな気分になる。胸が痛かった。

 電車の中は空いていたので、並河君のいるホームが見える座席に座った。

 彼も私を見つけ、手を振ってくれた。バイバイ。そう言われたのは、口の動きで何となく分かった。

 でも、さっき彼が何を言っていたのかは、どれだけ考えても分からなかった。


 その答えは、翌朝知ることができた。

「昨日の帰り際に言ったこと、さすがに踏切の音で聞こえてなかったかなと思って」

 朝、昇降口で待ち伏せしていた並河君は、手のひらサイズのケント紙を差し出してきた。

「俺のベル番。学校ではなかなか会えないし、話したいことあったらいつでも連絡して? 夜もけっこう遅くまで起きてるから」

 ポケットベルの番号を教えてくれた。昨日のことをここまで心配してくれているなんて、無表情ながらも内心深く感激した。

「ありがとう。でも、私、ポケベルもケータイも持ってなくて……」
「そうなの?」
「やっぱり変だよね。皆持ってるのに……」

 たったこれだけのやり取りで、家の経済状況や家庭環境が露呈してしまった気がした。恥ずかしい……。

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