セカンドパートナー

《この絵が一番好評だった。》

 返信と共に、綺麗な夕焼けの絵を写した画像が送られてきた。

《並河君、本当に空を描くのが上手いね。昔からずっと。ううん、大人になってますますすごくなってる。》

 素人の私には、感動を表現するにもこれが精一杯。どうしても拙くなる。

《詩織に言われると一番嬉しい。ありがとな。》

 一番という単語に、ドキッとした。一瞬、特別扱いされた気がした。

 ううん、落ち着け。いつものメールだ。

 深呼吸し、スマホをそっとテーブルに置いた。

 並河君は友達だ。お互い、言葉でそう確認しあったこともある。恋愛では、決してないーー。


 メールのやり取りが終わり、もう一度並河君からのメールを見た。

「やっぱり、綺麗だなぁ……」

 彼の描いた夕焼けの絵は、外国の小高い丘から海に沈む太陽を捉えていた。

 絵を見ているとその人自身が伝わってくるようで、友情なのに恋のような、私は並河君に対して不思議な感情をもてあます。


「今はどんな人と付き合ってるんだろ……」

 並河君とは長年の付き合いなのに、彼の恋愛の話はあまり聞いたことがない。彼女がいたことはあるみたいだけど、あまり話したくなさそうだからこっちも訊かないようにしてる。だけど、本当は少し気になってる。

 33歳。そろそろ結婚とかそういうことを考えても良さそうなのに、いまだに独身だし。

「だからいつまでも若いのかな。ちょっとうらやましいや」

 若いとは感情面のこと。現在の彼の外見がどうなっているかは分からない。並河君とは、高校の卒業式以来、一度も会っていない。
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