セカンドパートナー
結局、今日はあれから並河君と顔を合わせてない。
普通科の校舎は全階に渡り廊下があり、それらは音楽科と美術科それぞれの校舎につながっている。だから、こっちから訪ねていけば並河君にも会える。
でも、その勇気はなかった。
いまさら訪ねていって、何を言えばいいのかも分からなかった。
もらったケント紙は折りたたんで制服のポケットにしまってあった。それを取り出して広げ、一人トボトボした足取りで見つめていると、後ろからドタドタと数人の足音がした。少し派手目な他クラスの女子グループのものだった。
彼女達は私を追いかけてきたらしい。息を切らせて、矢継ぎ早に訊(き)いてきた。
「天使(あまつか)さんって並河君と付き合ってるの? ってか、彼氏とかいる?」
「いないし、並河君ともそういうのじゃないよ」
気付かれないよう、並河君からもらったメモをスカートのポケットに押し込む。
「本当にフリー!? 絶対?」
「うん……」
この子、悪気はなさそうだけどすごく押しが強い。全然しゃべったことないのに友達ノリでグイグイくる。憎めないタイプだけど話題が話題だ、反応に困る。
愛想笑いを浮かべつつ内心引いていると、ノートの切れ端を強引に渡された。
「これ、天使さんに渡してって頼まれてさ! ウチのクラスの奴のなんだけど、一途だし浮気しないし絶対いいヤツだから、ベル返してあげて? そういうことでよろしく!」
「えっ……」
断る隙もなかった。