セカンドパートナー
リア友なのにメル友みたいな彼。だからなのか、並河君は、普段平凡な私の想像力を変な方向に働かせる存在でもあった。
こうして彼から近況報告のメールが届くたび、私は想像してしまう。
彼の自宅アパートの内装。
絵を描く姿。
そこへ行って楽しく過ごす自分。
愛を囁かれる夜。
「って、何考えてんだろ! 私には優人がいるっていうのに!」
真っ赤な顔で、意識を妄想から切り離した。
年々、妄想力がたくましくなってる気がする。恥ずかしい。
「羽留も並河君も、すごいなぁ……。高校時代に勉強したことを今も生かしてる」
冷静さを取り戻すべく、独り言をつぶやいた。
「それに比べて、私は……」
口にして、ますますヘコんだ。
何の才能もない、平凡な主婦。
結婚後は何年か派遣社員として大手工場に勤め、それなりの給料をもらっていたけど、30歳ちょうどの頃派遣切りに遭い、それからは業務委託でエステサロンのチラシ配りに勤しむ毎日。給料は雀の涙ほどしかない。
優人のおかげで、自分の稼ぎは全てこづかいにできている。それに甘え、服や化粧品を買ったりが唯一の楽しみで自分を飾ることしか興味がない。結婚歴もそこそこなのに料理もそんなに好きじゃない。趣味はあるけど、人前で誇れるようなものでもない。
こんな毎日から抜け出したい。
羽留と並河君の活躍を見て、動きたい衝動がおさまらなかった。
悩んだ末、LINEで羽留に相談したらすぐ電話がかかってきて、何か習い事をしたらどうかと提案された。