セカンドパートナー
習い事と聞き、真っ先に浮かんだのはピアノだった。昔、どうしてもやりたかったこと。
今なら、反対した親の気持ちも分かる。なぜなら、ピアノはお金のかかる習い事だからだ。
月々の月謝だけでなく、ピアノを買うお金。音を維持するため調律師を呼んで定期的にピアノのメンテナンスをしなければならない。本格的にやるならなおさらだ。
「習い事かぁ……。給料もそんなにないし、さすがに優人のお金はアテにできない。でも、どうせやるなら楽しめることがいいなぁ」
『書道は? 昔やってたって言ってなかった?』
昔、唯一習わせてもらえた習い事が書道だった。お金もかからないし実用性が高いからという理由で、親が行けと言ってきた。
「でも、書道の稽古、あまり好きじゃなかったんだよね。結局すぐやめちゃったし」
『そっかぁ……。でもさ、大人になったらまた感じ方も違うかもよ? やってみたら案外楽しめたりして』
私のことを考え、羽留はアドバイスをくれた。
『それに、詩織の気持ちとしてはさ、本格的に何か習いたいっていうのじゃなくて、平穏な毎日に刺激がほしいっていうのじゃない?』
「その通りだよ。羽留すごいっ! 何で分かったの!? 私、自分でもあんまそういうの自覚してなかったのにっ」
『当たり前! 何年友達やってると思ってるの?』
わざとおどけたように言う羽留の声で、うじうじしていた気持ちが飛んでいった。
そうだ。私は今の日常に変化がほしい。
「とりあえず、書道の稽古、予約入れてみるよ!」
『うん、その意気だよ。また、どうなったか報告してね〜』