セカンドパートナー
同級生にここまで褒められたのは初めてらしく、羽留も照れていた。頑張って練習して、その成果を褒められたらとても嬉しいだろうな。並河君の褒め言葉は丁寧で、私のとは全然違うし。
リサイタルとか、私には分からないことばかりだけど……。
疎外感を感じはじめた私の前で、羽留と並河君の会話は盛り上がった。
「『革命のエチュード』が好きなら、並河君、これも好きなんじゃない?」
「イタリア楽曲…?」
「これとか」
『声楽』という歌を歌う授業で使われる教科書をパラパラ開き、その中の一曲を羽留はサッと弾いてみせた。
タイトルは『Sebben, crudele(セッベン クルデーレ)』。
並河君は夢中で曲を聴いている。綺麗なメロディー。切ない感じがするのに、心があたたかくなる音。
弾き終わった羽留に、並河君は尋ねた。
「いい曲だな。この歌詞、どういう意味なの?」
「『どんなに悩まされても、いつも変わらずあなたを愛していたい』って歌詞だよ」
「へえ。気に入ったよ」
恋愛の曲なのかな。そんな意味があったんだ。なんだか深い。切ない曲調だったのには、それなりのわけがあるんだな。
『セッベンクルデーレ』の余韻から抜け出せず、もう一度聴きたいなと思っている中、羽留と並河君の会話は盛り上がっていく。
「並河君、けっこう音楽好きなんだね。美術一筋かと思ってた」
「絵は、好きでやってたらこうなったって感じで、子供の頃はピアノもやってたんだよ。絵の方が楽しかったからピアノはすぐやめたけど、親がクラシック好きだから影響されたのかも。奏詩って名前も、親の願望が高じてつけられたって感じ」
「そうなんだ! 並河君、だからクラシックも好きなんだね」
羽留も驚いている。私もビックリした。