セカンドパートナー
そうだったんだ。親の思い入れのある名前って、それだけでうらやましい。
名前は、親が初めて子供に渡す贈り物。愛されているんだと感じる。私の名前はお寺の人に画数を考えてもらってつけたと聞いた。
「いいなぁ。そういう由来みたいなの、ウチは全然なかったよ」
羽留が笑い混じりにそう言った時、会話に夢中だった並河君が突然こっちを見たのでドキッとした。
「そう、名前のこと褒めたら、詩織とウワサになったんだよ」
「え…?」
ウワサって、並河君が私のことを好きだという……?
並河君はしみじみと語った。
「入学式の日に貼り出してあった新入生のクラス表で詩織の名前見つけた時、運命感じた。それをなにげなく美術科の人に話したら、ああいうウワサになって広まっちゃって……」
ウワサの原因。まさかこのタイミングで聞くことになるとは思ってなかった!
羽留も驚いたらしく、目を見開いて並河君を見ている。
「詩を奏でる人になってほしい。奏詩って名前は、そういう願いを込めて名付けられたんだ。詩織の名前は俺のに似てると思った。詩を織るって書いて詩織。綺麗な名前だなって」
「並河君の名前はすごいけど、私のは由来なんてないし、たまたまだよ、たまたま。どこにでもある名前だし!」
並河君に褒められるほど、なぜだか自分の名前を否定したくなる。並河君の親ほど、ウチの親は子供に深い思い入れを抱いていないから。