セカンドパートナー

 並河(なみかわ)君と音楽の話で盛り上がる羽留(はる)にヤキモチを妬いて八つ当たりし、逃げ帰ってきた。

 羽留とはあれきり会うことなく週末を過ごし、月曜日を迎えてしまった。

 土曜日の夕方、親は二人とも出かけていたので、その隙に羽留の家に電話しようと思えばできた。でも、ピアノの練習の邪魔になると思いしなかった。

 ……ううん、ウソ。こっちから動く勇気がなかっただけ。

 羽留と撮ったプリクラを見た。羽留の字で《ずっと仲良し》と書かれている。胸が痛かった。できることなら、私もずっと仲良くいたかった。

 並河君の存在が絡むと、友達に対する気持ちや態度がガラリと変わってしまう。こわい。


 同じクラスの友達がこの日ばかりは逃げ場のように思え、ホッとした。いつもは物足りないと不満に思う日常にも妙な安心感を覚える。

 いつもやる気はないけど、今日は特に授業に身が入らない。羽留のことばかり考えてしまう。絶対、嫌な気持ちにさせたよね……。


 適当にやり過ごそうとしていたのに、3時間目と4時間目に家庭科の調理実習があることを思い出し気が滅入った。

 移動が面倒だし、料理はあまり好きじゃない。

 体調が悪いフリをして保健室に逃げようかと考えたけど、さすがにそれはできなかった。一人欠けただけで調理手順が狂い、班員に迷惑をかけてしまう。あとあと班の人に文句を言われるのも嫌なので仕方なく参加した。

 調理実習は、班ごとに作る料理を決め、班員で分担して材料と調味料を持ち寄ることになっている。

 調理室に入るなり、独特の甘い匂いがした。なんだろう、まだ何も作ってないのに。

 ウチの班はカルボナーラを作ると決めていたけど、お菓子やデザートを作る班もある。家庭科は普通科の授業の中でもっとも自由度の高い科目なので、皆とても楽しそう。

 中には、作った物を好きな男子や彼氏に差し入れする女子もいるし、調理実習のある日はそういうのを期待してソワソワする男子も多い。はしゃぐ皆の様子を見て、マイナスだった気持ちが少しだけ落ち着いた。

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