セカンドパートナー
班長の指示通りパスタ麺を茹でていると、隣の班の女子達が窓から校庭を見下ろし嬉しそうに騒いでいる。彼女達の班は窓際の調理台を使っていた。
「あれ、美術科じゃない? サッカーやってるよ」
「マジで? 1年?」
「だね。並河君いるし」
ドキッとした。並河君がサッカー? 全然想像つかない。
ちょっとでいいから並河君の体育姿を見たい。でも、タイマーと鍋を見てなきゃいけないし、この班の調理台は窓際から遠い。……ため息が出た。
惜しい気分で鍋の中の麺を見ていると、並河君を見ていた女子の一人、田中さんが恥ずかしそうに話す声がした。
「並河君、フリーなんだって。今日のマフィン成功したら渡そうかなぁ」
「成功するに決まってるよ! 意識してもらえるようにがんばれ!」
田中さんの班、マフィン作るんだ。可愛いな。女の子の差し入れって感じがする。
とてもじゃないけど、カルボナーラは差し入れできないな。できたとしても色んな意味で重すぎる。
って、別に、差し入れするために作るわけじゃない。授業だし! だいたい、差し入れだなんて、そんな恋する女の子みたいな行動、私には似合わない。想像しただけで自分で自分が気持ち悪い。
茹で上がりつつある麺を菜箸でクルクルかき混ぜていると、いつの間にか田中さんが私のそばに来ていた。
「天使(あまつか)さんって最近並河君と仲良いよね。しょっちゅう渡り廊下とかでしゃべってない?」
「うん、しゃべってるけど……」
「聞いたんだけど、並河君とはただの友達って本当?」
「うん。そうだよ。恋愛とか全然ないから」