パートタイマー勇者、若奥様がゆく
困った王子こと、アルヴィン王子ががなり立てるのを耳を塞いで聞き流していると、足元からカサカサと音がしました。
その音がした方へ視線を落として、私は全身から血の気が引いていくのを感じました。
「ご!」
「は? ご?」
「ご! ご、がっ!」
「何が言いたい?」
怪訝そうな顔をする王子の袖を引っ張り、地面を指差します。
王子が描いた魔法陣みたいなものの光の上を、黒くて小さなものがカサカサと歩いていきます。そのまま牢屋を抜け出して行けば良いものを、あろうことかヤツは私たちの方へと戻ってきたのです。
ざわり、と全身が粟立ちました。
「ごおおおおおおおお!!!!!!」
地の底から響くような雄たけびを上げ、私は足元の『ご』に抑えきれない殺意を向けました。
黒くて、てろてろしていて、言葉で表現するのも恐ろしい生き物。私の最大の敵。いつもならば貴臣さんに助けを求めるのですが、彼は出勤中。ここは私が戦わなければならない場面です。
……いいでしょう。相手になりますよ。
そのまま逃げていけば手を出さないでいたものを。
向かってくるというのなら、返り討ちにするまでです!
「駆逐!!!!!!」
右手に持っていた半透明な黄色い袋を思い切り振り上げ、風切り音を鳴らしながら宿敵に向かって叩きつけました。
この世から消え失せろと、心の底から叫びました。
けれどもまさか、ゴミ袋が爆発するとは微塵も思っていませんでした。
そうなのです。私がゴミ袋を地面に叩き付けた瞬間、耳を劈く破裂音とともに、閃光が散ったのです。
その音がした方へ視線を落として、私は全身から血の気が引いていくのを感じました。
「ご!」
「は? ご?」
「ご! ご、がっ!」
「何が言いたい?」
怪訝そうな顔をする王子の袖を引っ張り、地面を指差します。
王子が描いた魔法陣みたいなものの光の上を、黒くて小さなものがカサカサと歩いていきます。そのまま牢屋を抜け出して行けば良いものを、あろうことかヤツは私たちの方へと戻ってきたのです。
ざわり、と全身が粟立ちました。
「ごおおおおおおおお!!!!!!」
地の底から響くような雄たけびを上げ、私は足元の『ご』に抑えきれない殺意を向けました。
黒くて、てろてろしていて、言葉で表現するのも恐ろしい生き物。私の最大の敵。いつもならば貴臣さんに助けを求めるのですが、彼は出勤中。ここは私が戦わなければならない場面です。
……いいでしょう。相手になりますよ。
そのまま逃げていけば手を出さないでいたものを。
向かってくるというのなら、返り討ちにするまでです!
「駆逐!!!!!!」
右手に持っていた半透明な黄色い袋を思い切り振り上げ、風切り音を鳴らしながら宿敵に向かって叩きつけました。
この世から消え失せろと、心の底から叫びました。
けれどもまさか、ゴミ袋が爆発するとは微塵も思っていませんでした。
そうなのです。私がゴミ袋を地面に叩き付けた瞬間、耳を劈く破裂音とともに、閃光が散ったのです。