パートタイマー勇者、若奥様がゆく
 体を吹き飛ばす衝撃に、腕を掲げて交差させながら耐えます。

 牢屋の鉄格子がひしゃげて吹き飛び、ゴツゴツとした岩壁にも穴が空き、天井も崩れながら飛んでいきます。

「ごぶああああっ!?」

 凄まじい爆風が吹き荒れる中、どこからか王子の間抜けな声がしました。助けてと聞こえた気もしますが、私はそれどころではありません。爆風によって短いワンピースが勢い良く捲れ、中が丸見えになってしまったからです。私は必死にスカートを抑えました。

 近くに男性がいるのにこんな現象。

 貴臣さんが知ったら心配するではありませんか。



 けれどもその心配も杞憂だったようです。

 爆風が収まり辺りを見回すと、そこは瓦礫の山と化していました。その山の上で金髪碧眼の王子様が白目を剥いて倒れていました。どうやら意識はないようです。良かった、下着は見られずに済んだようですね。

 ほっと一息ついて、自分の体に異変がないか確認してみます。

 ゴミ袋を持っていた私は、体がバラバラになってもおかしくない距離にいました。けれども私には傷一つついていませんでした。服が破れたりもしていません。何故でしょう。

 でも城を吹き飛ばすほどの爆発です。きっとあの黒い生き物も滅したに違いありません。ついでに王子も吹き飛ばしてしまったようですが。

 ……そうすると王子が倒れたのは私のせいでしょうか。

 勇者とか召喚とか訳の分からないことを言っていますが、さすがに私のせいで倒れたというならば放っておけません。

「王子、王子、大丈夫ですか」

 瓦礫の山をよじ登って王子の元へ行き、軽く頬を叩いてみます。

 小さく呻き声を上げて、王子が薄っすらと目を開きました。それからゆっくりと視線を巡らせ、私で止めました。

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