パートタイマー勇者、若奥様がゆく
 魔王の手下をゴミ袋で吹き飛ばした後は、王子を姫抱っこしてスタコラサッサと逃げていました。

 周囲の景色も変化しています。魔王城周辺の草木の生えない不毛の大地から、背の低い木々がポツポツと並ぶ緑の平原となっています。

 あれからどのくらい時間が過ぎたのでしょうか。『カラちゃん』は録画予約をしていたので諦めましたが、卵はまだ諦められません。最近は卵の値段も高騰していて、1パック98円なんて滅多にないのですから。

「王子のお城はまだですか」

 砂埃を上げながらひらすらに走る私を見て、さすがに申し訳ないと思ってくれたのか、王子は小さな声で「すまん」と呟きました。

「この礼はきっとする」

「礼よりも早く帰りたいです」

「す、すまん。そうだ、お前の欲しがっている卵をやろう。ウコン鳥の卵は我が国でも希少な高級品だ。それを欲しいだけやる」

「本当ですか」

「ああ。望むなら金銀財宝、なんでも選べ。お前には迷惑をかけたからな。それなりの褒美を取らす」

「ありがとうございます」

 有り難いことに、買い物の手間が省けました。

 しかもタダで食材を手に入れることが出来るようです。今日の夕飯代が浮きましたよ。

 これで高臣さんが帰宅するまでに帰れれば、ちょっと遠いところまで買い物に出た、くらいの認識で済みそうですが……馬で三日の距離ですからね。不眠不休で走ったとしても、同じくらいはかかるでしょう。

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