パートタイマー勇者、若奥様がゆく
けれども、思い出してしまったのです。
『楽しみにしてるよ』
そう言って会社に出かけていった貴臣さんの顔を。
残業がないから早めに帰れるよ。そう言って、私が作る夕飯を楽しみにしていると微笑んだ愛しの旦那様を。
「……こんなところで死ぬわけにはいきません。私は、晩御飯を作るのです!!」
私はぐいっと王子を引き上げました。
「王子、浮遊の魔法!」
王子は白目を剥いて意識を失っていたので、鳩尾に一撃入れて無理やり覚醒させました。王子は胃の中のものをケロケロしてしまいましたが、構いません。魔王の陽炎が迫っているのです。時間がないのです。
「飛びますよ!」
王子は白目を剥きながらも、震える細い指で宙に何かを描きました。ふわり、と足が地面から離れます。
次は鳥や飛行機のイメージを思い浮かべながら、爆発の呪文を……。
あら。
私、魔法の呪文など、何一つ知らないではないですか。
「王子、王子、爆発の呪文は何と唱えるのですか」
「ぐ、ごほ、△Ψο□+Б*Ж・……」
何を言っているのか分かりません。
普通に会話が出来るのに、魔法の呪文の言葉だけ聞き取れないなんておかしいではありませんか。一体どうなっているのですか。日本語に魔法語? がないから変換出来ませんとか、そういうことでしょうか?
魔王の陽炎はすぐ頭上。モタモタしている暇はありません。
ええい、ままよ。
「『ロケット噴射』!」
某鉄腕ロボットのように、足から火を吹くイメージを作ってそう叫んだら、ぐん、と体に重力がかかりました。私と王子の体はみるみる地面から離れていきます。
ここでも勇者特典ですか。日本語で魔法が使えましたよ。
『楽しみにしてるよ』
そう言って会社に出かけていった貴臣さんの顔を。
残業がないから早めに帰れるよ。そう言って、私が作る夕飯を楽しみにしていると微笑んだ愛しの旦那様を。
「……こんなところで死ぬわけにはいきません。私は、晩御飯を作るのです!!」
私はぐいっと王子を引き上げました。
「王子、浮遊の魔法!」
王子は白目を剥いて意識を失っていたので、鳩尾に一撃入れて無理やり覚醒させました。王子は胃の中のものをケロケロしてしまいましたが、構いません。魔王の陽炎が迫っているのです。時間がないのです。
「飛びますよ!」
王子は白目を剥きながらも、震える細い指で宙に何かを描きました。ふわり、と足が地面から離れます。
次は鳥や飛行機のイメージを思い浮かべながら、爆発の呪文を……。
あら。
私、魔法の呪文など、何一つ知らないではないですか。
「王子、王子、爆発の呪文は何と唱えるのですか」
「ぐ、ごほ、△Ψο□+Б*Ж・……」
何を言っているのか分かりません。
普通に会話が出来るのに、魔法の呪文の言葉だけ聞き取れないなんておかしいではありませんか。一体どうなっているのですか。日本語に魔法語? がないから変換出来ませんとか、そういうことでしょうか?
魔王の陽炎はすぐ頭上。モタモタしている暇はありません。
ええい、ままよ。
「『ロケット噴射』!」
某鉄腕ロボットのように、足から火を吹くイメージを作ってそう叫んだら、ぐん、と体に重力がかかりました。私と王子の体はみるみる地面から離れていきます。
ここでも勇者特典ですか。日本語で魔法が使えましたよ。