パートタイマー勇者、若奥様がゆく
 なんて考えていたら、頭に衝撃を受けました。

 どうやら宙に浮かんでいた魔王に頭から突っ込んだようです。あまりの痛みにぽろっと出た涙が、空の彼方へ消えていきました。

 コンマ数秒後、どーん、どーん、と平原に音が響き渡りました。

 最初のどーんが魔王が地面に突っ込んだ音で、二番目の音が私と王子が突っ込んだ音です。

 しかし幸いにも魔王がクッションとなったようで、八つ墓村のようにならずに済みました。地面から二本足を突き出して倒れたのは魔王でした。

 魔王は動く気配がありません。

 おや、どうやらこれは。


 勇者は 魔王を やっつけた


 ……というヤツですね。


「よし」

 私はそのことに満足して頷きました。

 これでやっと、王子の城へ帰れる。そして私も貴臣さんの元へ帰れます。


 しかし先程のロケット噴射ではどうしても真上にしか飛ぶことが出来ず、大きな岩を見つけて、そこに足をつけて真横に飛び出すことでようやく王子の城に辿りつくことが出来ました。

 城ではたくさんの兵士たちや王様に歓迎されました。

 城の方たちは私という勇者を召喚し、無事に帰ってきた王子を絶賛していました。調子に乗った王子が高笑いしながら不遜に振舞っていたので、密かにお尻に蹴りを入れておきました。ケロケロして白目を剥いているだけだった人が、調子に乗るんじゃありません。

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