片恋。

羽織ものはお姉ちゃんの茶色いコートでも借りよう。



靴もお姉ちゃんのやつテキトーに選んで…。


「きゃーーーっ!もう40分‼︎‼︎」


ドタバタと一階と二階を行き来して、なんとか寝癖をごまかして近くのショッピングモールへ走る。








「心ちゃん!!!遅くなって本当ごめん…」




結局、ショッピングモールについたのは12時20分。



最悪だ。


20分も待たせてしまった。



「いーよぉ。寝癖、ここ直ってないよ」



笑顔で許してくれた心ちゃんは、私の前髪の一束をちょんと突ついて見せる。



「へっ⁈うわ、本当だぁ…。寝坊しちゃって…」


ぴょこんと天井へ向かって伸びるその一束をおさえながら、えへへと笑う。


「そっかあ。慌てなくても、良かったのに。ふふ」



そう言って口元に手をあてた心ちゃん。



…の人さし指の関節と薬指、小指の付け根近くに、青あざが出来ているのが気になった。


「…心ちゃん、あざ?大丈夫?」



「うん、ちょっと……あ、ほら、ここだよ!はやくはいろ〜」



ぐいぐいと店内に押し込められて、それ以上は何も言えなかった。
< 33 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop