片恋。
羽織ものはお姉ちゃんの茶色いコートでも借りよう。
靴もお姉ちゃんのやつテキトーに選んで…。
「きゃーーーっ!もう40分‼︎‼︎」
ドタバタと一階と二階を行き来して、なんとか寝癖をごまかして近くのショッピングモールへ走る。
「心ちゃん!!!遅くなって本当ごめん…」
結局、ショッピングモールについたのは12時20分。
最悪だ。
20分も待たせてしまった。
「いーよぉ。寝癖、ここ直ってないよ」
笑顔で許してくれた心ちゃんは、私の前髪の一束をちょんと突ついて見せる。
「へっ⁈うわ、本当だぁ…。寝坊しちゃって…」
ぴょこんと天井へ向かって伸びるその一束をおさえながら、えへへと笑う。
「そっかあ。慌てなくても、良かったのに。ふふ」
そう言って口元に手をあてた心ちゃん。
…の人さし指の関節と薬指、小指の付け根近くに、青あざが出来ているのが気になった。
「…心ちゃん、あざ?大丈夫?」
「うん、ちょっと……あ、ほら、ここだよ!はやくはいろ〜」
ぐいぐいと店内に押し込められて、それ以上は何も言えなかった。