片恋。
「おっはよぉ〜っ‼︎‼︎優っ。今日も寒いね〜」
私は玄関のドアを開け放ち、家の門の前で私を待っている優に気持ち良く話しかける。
「おぉ、はよ。朝から元気だなぁ」
優はふっと微笑んで、私の頭を優しくなでた。
きゅん…。
「ふふ。そぉかな?今日ってめっちゃ雪降るんだって‼︎…あ、もう降ってる…」
「こら華美っ。ちゃんと、玄関のドアを閉めなさいっ!ったく…あら、優くんおはよう〜。わざわざ迎えに来てくれてありがとう」
ママの言葉に、優はにっこりと笑って首を振る。
「いや、全然っす。華美の迎えなんて、もう慣れっこだし」
…そういえば、昔からいつも一緒に学校行ってたね。
家を出たらいつも家の門の前にいてさ。
おせーよ、とか言われてさぁ。
でも、私が遅れても待ってくれてて。
…心ちゃんと出会ってからは、別々に登下校してたよね。
…心ちゃん…。
もう3週間も優とあってないよね。
…さみしいよね。
さみしくないわけがない。
優のことが、嫌いになって別れたんじゃないから…。
…時々ね、優が小さな声でつぶやくんだ。
『心…』
って。
優も、絶対にさみしい。
だけど、私にはそんなそぶりひとつも見せないで、ずっと笑ってる。
私には、無理やり笑ってるって分かるよ。
何年一緒にいることか。
そんなことくらい、一目でわかる。
…だけど、私は気づかないふりをしてる。
きっと、今私が、嘘ついて無理して笑ってるのわかってるよって言っても、優を傷つけるだけ。
っていうか、ひたすら落ち込んで悲しんでて欲しいわけでもないし。
心ちゃんは優との想いは消そうとしてる。
だから、優にも、そんな悲しい記憶、はやく薄れてほしい。
…私がずるいから。