片恋。
その言葉に、優は渋々と、首を縦に振った。
「逢いたい…」
「優…」
「だけど、出来ねぇんだよ。電話も繋がらない、メールも返事がない。じゃあ、どうすればいいんだよっ…?」
心の高校に行っても会えなかったし…と、
肘をついて髪をかきあげて、悔しそうな表情を見せる優…。
優。
優…。
わかった、私が、逢わせてあげるから。
私はケータイをポケットから取り出して、電話帳を開いた。
心ちゃん、の文字を見つけて、迷わず通話ボタンを押した。
「私、実は心ちゃんの番号知ってたんだ…っ!黙っててごめんね…」
「別に。そのこと、俺知ってたし…」
「今心ちゃんにかけてるからっ…」
「はっ⁈いや、それは待てよ…!」
立ち上がった優に、私のケータイを握らせた。
プツ…と繋がった音がした。
かすかに心ちゃんの声で、『華美ちゃん?』と聞こえた。
「華美…っ?」
小さな声で優が私を振り返る。
「ほらっ、心ちゃんに、優の気持ちを伝えて…」
そう言って、とん、と優の背中を押した。
すると、優が覚悟を決めたように、力強くうなずいた。
そして、私のケータイを耳にあてた。
「…久しぶり、心」