明日へのヒカリ


そして母さんは、再び父さんに向き直る。


「聖……」

「優美。もう、それ以上何も言わないでくれ……」


父さんはそう言いながら、母さんの手を、壊れ物を扱うかのように優しく、そっと握った。


そんな父さんを見て、母さんは優しく笑った。

そして……


「今までありがとう。愛してる」


母さんはそう言うと、静かに目を閉じる。

そして、父さんが握っていた母さんの手は、力なく父さんの手から、するりと抜け落ちた。


母さんが、死んだ……。

あの優しい母さんは……、もう、いない……。


母さんの顔は、とても安らかで、今にも起きてきそうな顔だった。


夢でも見ているかのようだった。

夢で……ありたかった……。


◇◆◇


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