お前のとなりは俺だから
私は、勢い良く後ろへと振り返る。
すると、楓の後ろに、何事もなかったかのような顔をしている皐月と目が合った。
「なんで皐月がここにいるのよっ!!」
「は? 学校案内してくれねーなら帰るしかねーだろ」
「だからって、なんで……」
私がそう言ったところで、皐月は私に腕を伸ばす。
そして……
ムギュッ
「はなしぇ、このヤロー」
私は、ほっぺを掴まれて、くちばしみたいになった口を懸命に動かしてしゃべる。
「え? はなしぇ? どうした、言葉もまともに喋れねーのか?」
と、皐月はゲスい顔でムギュムギュと掴みながらそう言う。
「はぁ……」
楓は、大きな溜め息をついたあと、一人でスタスタと靴箱へと歩き出した。