手のなかにキミ

戦いを終えた私は、どっと疲れて自席へ。ずっしりと重く分厚いファイルを机の上に置いて、倒れ込むように椅子へと腰を下ろした。

背もたれに思いきり体を預けて、天井を仰いで大きな溜め息でも吐きたい。この胸の中で行き場を失くして暴れている気持ちを、全部吐き出してしまいたい。

そう思いつつ、ファイルの上に重ねた両腕の中に顔を埋めた。


「どうしたの? また何か言われた?」


耳元で囁くような優しい声。ほんの少しだけ顔を上げてみると、彼と目が合った。
私を見て、にこりと微笑んでくれる。


「昨日と同じこと、また説明させられた」


ぼそっと吐き捨てるけれど、スッキリするわけもなく。まだ胸の中はもやもやしたまま。さっき天敵が見せた嫌味な笑顔が脳裏に浮かんで離れない。


「おいでよ」


彼が小さく頷いた。
私を迎え入れてくれるように。


だから私は、まっすぐ手を伸ばす。
愛しい彼へと。


滑らかな彼の肌が吸い付くように手に馴染んで、ふわりと包み込まれるような安心感。彼を包み込んでいるのは私なのに。
ここが私の落ち着ける場所。



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