俺の夢【ぎじプリ】
いつだって俺の側にいて、彼女の優しさとその体温を感じて居たかったが、仕事の話で呼ばれればすぐに余所へ行ってしまう。


「ちょっといいかね」


ほら見ろ、人気者の彼女は営業の吉田課長に呼ばれてそちらに行ってしまった。

彼女の温もりが離れて行ってしまうのが寂しい。

優しい彼女はうっすらハゲかけている吉田課長にだって当然のごとく優しい。

可愛らしい笑顔で吉田課長の隣に座り、課長に頼まれる雑用を嫌な顔一つせず聞いてあげている。

仕事とはいえ俺以外の男にそんなに優しく微笑みかけないで欲しい、俺以外の男の側でそんなに楽しそうにしないで欲しい、そんな嫌な気持ちがわき上がってくる。

でもそんな事を言って心の狭い男だと思われたくない俺は、嫉妬で焼け焦げそうになる心を必死に隠して、ひたすら大人しく彼女の帰りを待つ。

きっと彼女だって俺の側が一番居心地がいいに決まっている。

そう信じてはいるが、人気者の彼女は吉田課長に次いで他の男達に声を掛けられて、あっちの席へ、こっちの席へと忙しく飛び回っていて、なかなか俺の元へ帰ってこない。
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