悲しみに、こんにちは4
先輩、こっちです! なんて言いながら
入家君は私を引っ張る
「なんなのよう?」
「いいから早く、ね?」
モールを出た私たちは近くの公園に向かった
「……うわー、綺麗……」
入家君が指差した先には
大きな杉の木の周りを囲むようにライトアップされた
色鮮やかなイルミネーションだった
「へぇー、私、知らなかったよ。綺麗だね。」
イルミネーションは私たちを明るく包み込む。
「意外とロマンチストなんだね」
「先輩、ここ緑ヶ丘公園って言うんです」
「えっ?」
「だから、冬の間は緑を基調にしたイルミネーションを点灯するんです。」
そう言いながら
入家君はポケットの中から長方形の箱を取り出した
「……先輩、お誕生日、おめでとうございます。」
彼は赤のリボンが巻かれた箱を私に差し出した。
「……うそ……知ってたの?」
12月14日 今日は私の誕生日だった
「17歳、おめでとうございます。」
優しげな彼の声が、
「開けていい?」
「ええ。」
私に届く。
「……ネックレス……。」
ハートに緑色に輝く小さなエメラルド。
「……素敵ね……」
「エメラルドっていろんな意味があるけど、絆を深めたい人に贈るんです。」
「えっ?」
真剣な顔をした彼はどこか悲しげに、
「俺は、貴女と同じ立場でありたい。」
「入家君……?」
「俺は皇子にはなりたくない。」
「えっ……」
「先輩がモンスターなら、俺も先輩と同じところまで落ちます。」
「えっ、入家君……知ってるの?
私の眼……?」
……そう、私は Green eyed monster
……緑色の目をしたモンスター
……だから、お姫様にはなれない。
「先輩が憶えてなくても……それでも、いいです。」
「……私たち、前に会ったの?」
「俺は、先輩に捕らわれたから……。」
そして…
「俺は、先輩のモノです。」
「えっ、入家君?
だって、貴方……さくらさんのこと…」
そして、彼は告白する。
「偽りだらけの俺らの中で、貴女に向き合うためには……」
彼の決意を。
「俺は、真実でありたい。」
「芹沢 ユズキを手に入れる為に。」
「芹沢 ユズキの嘘も 芹沢 ユズキを巡る歪んだ関係も、」
「全て、包み込む真実でありたい。」
それは、私にとって……
「俺は、先輩が好きです。」
私にとって……
「だから俺に対するそれが、敵意でも構わない。
俺を傷つけても、構わない。」
私にとって……
「俺は、芹沢 ユズキが好きです。
だから、俺を利用して下さい。」
それは、私にとって毒でしかない。