悲しみに、こんにちは4
「何してるんすか?」
彼女に初めて話しかけた。
「えっとねぇ…」
その日、俺が帰ろうと思ったら彼女がいた。
ただ、地面を見ながらフラフラとさまよっている不思議な行動を取りながら。
「なんか、探してるんですか?」
「あー、コンタクト、落としちゃって……」
芹沢 ユズキがそう言いながら、俺をみた。
その時俺は初めて、その女と目があった。
正直、絶句した。
声が出なかった。
「カラーコンタクト探してるの。」
その女は澄んだ緑色の眼をしていた。
「……その眼……本物ですか?」
「ホンモノ?偽物があるの?」
「いや、そうじゃなくて……」
女はくっくっくと静かに笑った。
「クウォーターなの、私。」
平然とした態度で彼女は語る。
「隠してるんですか、その眼。」
「うん、だって変でしょう?」
「そんかこと無いです。ほんと……綺麗……」
こころからそう思った。
俺はその緑色の眼に惹きつけらた。
淀みのない澄んだ瞳は俺の心を捕らえて
離さない。
「ありがとう……でも、みんなが貴方みたいに良く思っているわけじゃないの」
悲しそうに彼女は答えながら、
「緑色の眼のモンスター」
そう彼女は続ける。
「えっ?」
「Green eyed monster」
「えっ、なんすか?」
「知ってる?Green eyed monsterの意味。」
俺は彼女が突然何を言っているのかわからなかった。
「私はね、今日の貴方みたいに
私の緑の眼が綺麗だって言ってくれる人がいるから、醜いモンスターでもいいと思ってるの。」
彼女は僕じゃない何処か遠くを見ながら、
「今日の貴方に、私は救われるの。
たとえ、私が醜いモンスターでも。」
ほら、あったわ なんて言いながら落ちたコンタクトを拾いながら、
「ありがとう、探してくれて。」
その瞳は俺を見透かすように
「嫉妬は醜いでしょう?」
彼女は去っていく。男のもとへ、去っていく。