悲しみに、こんにちは4
休日、普段は両親がいるのだが
この日に限っては、里帰りしていた。
まあ、つまり姉貴は両親の不在を利用して この男を連れ込んだわけだ。
別に俺は逐一両親に告げ口するわけじゃないので、どうでもいい話だが。
「そういえば、ユズキちゃん。」
姉と長門 春海はダイニングテーブルに座っていた。
俺は2人に構わず、ソファでテレビを観る。
気を利かせて部屋に戻ってもいいけど
なんだか、それはそれで癪だしなぁ……
「ユズキがどうした?」
「皐月と付き合いだしたみたいね」
……でも、嫌でも2人の会話は耳に入る。しかも、俺たちの話だし。
「ねえちゃん!!」
「あら、別にいいじゃないの。」
いい訳ない、目の前の男が面白がってる。
「へぇ、皐月君が言ったのか?」
……皐月君って呼ぶのか、姉貴の前では。
「ううん、そうじゃないんだけど……」
「じゃあ、ユズキがさくらにわざわざ報告したのか?」
……やばいな……これ。
この男には、知られたくない。
「そうじゃなくて、皐月の携帯の待ち受けがねえ……」
「姉ちゃん!!やめろよ!!」
振り向いた時には既に遅い。
男はニヤつきながら、俺を見る。
「ユズキなのか?」
くっくっくって笑いながら。
「そうなのよ。」
「へぇ、結構気に入ってんだな、ユズキのこと。」
……だから、姉貴は嫌いなんだ。