悲しみに、こんにちは4
その夜、姉貴は自分の部屋で静かに泣いていた。
「……あの人……全然、私のこと見ないの……。」
姉貴は机に顔を伏せて、何かを諦めたかのように泣いていた。
俺はそれをただ呆然と見ていた。
「あの人と居ても……何も感じないの。
キスしても、セックスしても……何も感じないの。
むしろ……悲しい。淋しくなるだけなのよ!!」
かすり声でなく姉貴は
あまりにも、惨めだった。
「……姉ちゃんは、何がしたかったわけ?」
誰よりも気高く美しい入家 さくらはもういない。
誰にでも愛されるお姫様はもういない。
「…わたしは……わたしは、安心したかったのよ!
私を見てくれる人がいるんだって、
私を愛する人がいるんだって、
安心したかったの……
それなのに……」
それなのに、長門 春海が残したものは 不安でしか無かった。
彼女はそう 言いたげだった。
「……姉ちゃん……それが、恋なんだよ。」
「えっ……」
「入家 さくらは長門 春海が好きなんだ。アイツに惚れてんだよ。」
……馬鹿な姉貴だ……
「……嘘よ……ありえないわ……
だって、こんな……苦しいわけがないわ!
こんなに重いわけないじゃない!!
なんで……なんでこんなに惨めなの……」
それが、彼女が初めて身を呈して払った代償なのだ。
何もしない、されるがままのお姫様が
初めて払った代償なのだ。
ただ自分を傷つけるだけの代償なのだ。