May I Kiss You? 【ぎじプリ】
「言わなくていい。おまえの気持ちはわかってる」

 彼は言って視線を逸らした。そうされる理由は、私にもわかってる。

「おまえの気持ちには答えられない。俺は深江主任のものだから」
「……わかってます」

 このやりとりをするのは今回が初めてじゃない。この三日間、主任が出張中なのをいいことに、何度も告白して断られてきたんだから。

「悪いけど、俺はおまえのものにはなってやれない」
「……はい」

 目にじんわりと熱いものが浮かんで、目の前がにじんできた。

「すみません、しつこくて」

 でも、深江主任とあなたがキスしているのを見て以来、どうしてもあなたのことが気になってしまった。暑い日も寒い日も、雨の日も曇りの日も、温かく涼しく潤いをもたらして深江主任を癒やすように、私もあなたに癒やされたい。思うだけなら罪にならないんだろうけど、私はそれ以上のことを望んでしまっている。

「ホントにキスしちゃダメですか?」
「何度言ったらわかるんだ」
「たった一度だけでも……?」

 上目遣いで彼を見つめてみる。そんなことで落ちるような人じゃないってこともわかってるけど……。
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