悲しみに、こんにちは5
あれから、30分。
時刻は夜の11時。
「まったく、ほんと、馬鹿なんじゃないですか?」
呆れ顔の顔は私にホットミルクを差し出した。
「先輩の家には、姉貴が電話しましたからね。
流石に、こんな時間に男の家にいちゃ不味いですからね。」
そう、今、私は入家君の部屋に居る。
彼の部屋でホットミルクを飲んでいる。
「……そっか。
さくらさんに借りができちゃったね。
ありがとうって言わなきゃね。」
……確かに、こんな夜遅くに 家を訪ねるなんて失礼極まりない……
「……ごめんなさい。」
「まあ、そうですね。
反省してください。」
そして、私が飲んでいるこのホットミルクを入れてくれたのは
他ならない 入家 さくらだ。
「……私たち、絶対、お互い嫌いだと思ってたの……」
私は、暖かいホットミルクを両手で包みながら思うのだ。
「絶対、真逆だって、思ってたの。」
「先輩……」
入家君のアーモンドアイもまた、私を包み込む。
このホットミルクのような温かみをもって 包み込む。
「好きの反対は、《嫌い》じゃなくて、
《無関心》なんですよ。」
「うん……」
「馬鹿ですよね、俺ら。
こんな簡単な事にも気づけないなんて
ほんと、馬鹿ですよね。」
「うん……、私はずっと隠してたのね。」
「……ええ、そうですね。」
「私……本当はずっと臆病なんだね。」
……私たちが本当に 必要としてたのは……
「私たちは、ただ自分の弱さに向きあうことだけ が必要だった。」
そう、私も、ハル君も、
「私たち、お互いに依存することで
自分の弱さを隠していた。」
……だって私も、ハル君も怪獣なんだもの。
「壊れるのが、怖かった。」
「でも、壊して欲しかった。」
「私たちの中に住むモンスターを
やっつけて 欲しかった。」
そう、私も ハル君も そっくりなんだ。
「私たちの運命を、私たち呪縛を
ときほぐさなければならない。」