悲しみに、こんにちは5
「おい、5分以内に来いって言っただろうが。」
いつも通りに見慣れたハル君の部屋に入る。
ハル君はクッションの上で 漫画を読んでいた。
……いやいや、いくら隣でも5分じゃ無理だよ……
「あのねぇ、女の子には時間がかかるの!!」
「なんだよ、トイレか?」
「……そういうコト言うからモテないんだよ……」
ちっとか軽く舌打ちする彼は
また視線を漫画に戻した。
……呼び出したのは、ハル君でしょうが!!
早く要件を言いなさい!!
「なんなのよう、ハル君!!」
時刻は夜の10時。
大学生の君は もう冬休みかもしれないけど
私は 学校があるんだぜ?課外授業があるんだぜ?
「まあ、座れよ。」
ハル君が無造作に床にサブトンを引いたので
仕方なく私は彼のとなりに座った。
「おっ、ユズ、お前シャンプー変えたのか?」
「あっよく気付いたね!お母さんたちの誕プレなの!」
「へえ、誕生日プレゼントがシャンプー?」
くっくっく、なんてあざ笑いしてるハル君。
まあ、確かにちょっと悲しい。
いや、かなり悲しい現実だ。
「髪の毛、心配されてんじゃねーの?」
「……ふっさふさ なんですけど!!」
本当、失礼な男だよ……
「そんなことより、なんなの?いきなり呼び出して?」
「俺、まだユズキに誕プレ渡してないだろ?」
……そう、私たちの間ではすっかり無かった事になってるが、あの日、あの誕生日の日……
「……別にいいよ、プレゼントなんか……」
あの日の出来事の所為でプレゼントどころじゃなくなった。
「お前は、キスがプレゼントでも良いってことか?」
あの日、私たちはキスをしてしまった。
お互いに他に恋人がいたくせに。