お届け物です。
郵便物
まさにそんな事を考えていたその時だ。
玄関のチャイムが部屋に鳴り響いた。
誰だ?今日は遊ぶ約束なんか入れてないはず。
「お母さん、ピンポン鳴ってるから出てー」
母からの返答はない。
わざと聞こえていない振りをしているのか、テレビに夢中になって聞こえていないのかは定かではない。
渋々立ち上がり玄関に向かい戸を開くと、薄い黒色の帽子を深く被った女の人が立っていた。
営業的な笑みを浮かべて。
「お届け物です。ここに印を下さい。」
ああ、郵便屋なのか。
女の人なんて珍しいな…
少し彼女に目を向けながら印鑑取って来ますね、と告げ母のいるリビングに戻った。
「郵便屋だったんだけど。印鑑貸してくんない?」
母は振り向いて印鑑がしまってあると思われる棚を指差した。
棚の中には案の定春川、と書かれた印鑑があった。
「あったあった」
印鑑を手に取り急いで再び玄関へと向かった。