お届け物です。
もちろん私はこんな荷物に覚えはない。
…いや、母の荷物かもしれないし。
箱の開け口に手をかけたものの、私に開ける事はできなかった。
臆病者の、私には。
「これ、お母さんの?」
嗚呼、今日は母と話す機会が多いな。
「違うけど…何が入ってるの?」
「知らない。お母さんが開けて」
そう言うと母は箱を開き中を覗きこむ。
「これ奈実宛てじゃん」
「えっ」
母が握るように箱の中身を取り出した。
灰色の袋に油性ペンで春川奈実様、としっかり書かれている。
随分厳重だなあ…箱の中に袋なんて。
とりあえず母から袋を受け取り、自分の部屋に向かった。
これ以上母との時間を過ごすのもなんだ。