知らない貴方と、蜜月旅行
「奥様の担当をさせていただきます、太田と申します。よろしくお願いします」
「ご主人様の担当をさせていただきます、田中と申します。よろしくお願いします」


私服から着替えて、うつ伏せになって待っていると二人の女性が入ってきた。二人とも30代くらいだろうか。綺麗なお姉さんというのが、私の印象だった。


エステは好きなアロマの香りを選んで、そのオイルを使ってマッサージしていくというもの。たまたま私も吏仁も、ラベンダーの香りが好きで、お部屋の中はほんのりラベンダーの香りが広がった。


「ご結婚されて、どのくらい経つんですか?」
「あ、あの、昨日…籍を入れたばかりなんです…」
「あっ、そうでしたか!それは、おめでとうございます!」
「…ありがとうございます」


私の担当の太田さんに話しかけられ、さすがに答えなければと、ドキドキしながら言うと、おめでとうございますなんて言われて、複雑な気持ちになった。


「美男美女で、いいですねぇ。旦那様、どうやって奥様と出会ったんですか?なかなか、出会いがなくて……」


今度は吏仁担当の田中さんが、吏仁に私たちの出会いを聞いた。なんて答えるのか、ハラハラしていると吏仁がとんでもない発言をした。


「あー、道路で出会ったんですよね」
「…っ?!げほっ…!」
「お、奥様大丈夫ですか?!」
「す、すみません、大丈夫ですっ」


道路で出会ったって、いくらなんでもおかしいでしょ!


「道路ですか…?」
「えぇ、なんですかね。紹介みたいなもんですかね?」
「あ、なるほど!それが、たまたま道路だったんですねー!」


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