知らない貴方と、蜜月旅行
「もしかしてさ、もう紫月って、蒼井さんのこと好きになってるのかもね?」
「えぇっ!?ない、ないよ、多分…。だって私、亮太に振られたばかりだよ?婚約破棄されたんだよ?」


あれだけ傷付いて、泣いたのに、すぐ違う男に尻尾なんか振らないよ。多分だけど…。


「うん、そうなんだけどさ。なんか最初会った時は、幸せそうな顔してなかったけど、蒼井さんと話してる紫月は、そんな顔じゃなかったよ」


自分じゃ、まったく分からない。いちいち鏡見るのも変だし、変じゃなくても見ないけど。


「わかんないけどさ、紫月は亮太くんに振られたことが今、一番に頭にあるから、そればっかりが付きまとってるんじゃない?一回、蒼井さんを一番にしてみたら?」
「吏仁を、いちばん……?」


そんなこと考えてみたこともなかった…。吏仁を一番に考えるなんて…。やっぱり、亮太のことが頭にあったから。


「忘れるのは難しいとは思うんだけどさ…。私も紫月の立場になってないから、知ったこと言えないんだけど、私は紫月に昔の悲しい過去より、今を幸せに生きてってほしいなって」
「久未……」


そう、だよね…。亮太の悲しい過去をずっと考えながら生きてくより、好きだと言ってくれる吏仁を大切に考えたい。


今はまだ傷が癒えないけど、きっと吏仁といたら、亮太とのことも薄れていく気がする。


「ありがとう、久未。私さ、亮太のことしか考えてなかったよ。吏仁のことも考えたことあったけど、一番には考えたことなかった」
「うん」
「ちょっと、あとでブリーズに行ったら、吏仁を一番に見てみる」
「いいけど、急に意識して真っ赤にならないでよ?」
「えぇっ!?なにそれ…」


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