知らない貴方と、蜜月旅行
そう断言されてしまうと、合わせる顔がない…。だって私、吏仁と亮太を行ったり来たりしてるんだもん…。


「とりあえず、行くぞ。俺は浮気なんかしねぇから安心しとけ」
「じゅ、準備してくるねっ」


ヤダなぁ、私。本当に最低だなぁ。久しぶりに、こんな風に喋ったり、抱きしめられたりしたら、ドキドキしちゃってさ…。吏仁が飽きちゃうのも時間の問題の気もするんだけど…。


「紫月、準備したか?」
「あ、はーい」


コートを羽織った時、吏仁に声をかけられ、急いで吏仁の元へ向かった。それにしても、こんな朝からどこに行くんだろう。


「ねぇ、吏仁?」
「んー?」
「どこに行くの…?」
「………」


いつものように車に乗って、吏仁に疑問をぶつけてみたけど、まさかのだんまりに、こちらも困ってしまった。ますます、どこに行くのか気になるんだけど…。でも、小さな声で吏仁が言ったのを私は聞き逃さなかった。


「……ごめんな」
「え?なぁに?なにが、ごめんなの?」
「なんでもねぇよ」
「………」


吏仁は確かに私に対して謝ったのに、聞くとなにも教えてくれないんだ。そして、車で走ること約1時間。着いた先は、どこにでもあるようなパチンコ屋さんだった。


「吏仁って、パチンコするの?」
「…いや。しねぇよ」
「……?だったらどうして、1時間もかけて、こんなところに来たの?」
「…まぁ、とりあえず行くぞ」


< 139 / 185 >

この作品をシェア

pagetop